映画紹介
ストーリー
40代後半までバリバリ仕事に励んできた。妻はそんな夫を「優しくて男らしい昭和の男」とのろける。塚田宏(76)がALSを発症して30年近くになる今、全身が動かない。表情も作れない。人口呼吸器で命をつなぐ。意思伝達は、唯一残された眼球の動きで行う。自分の人生と向き合う彼なりの手段が旅だった。病院、老人ホーム、教育現場や、在宅患者の家々へ出向く。家族一丸、一心同体での巡礼である。
「生きている僕を見てください」
2010年その巡礼が及んだ先はスイス。国が違えば社会制度も違う。文化が違えば命への考え方も違う。複雑な思いもわき上がる旅先、何を呼びかけても目を動かさない夫に苛立つ妻の姿があった。病気の進行により、意思疎通をとる最後の砦である眼球の動きまでもが鈍ってきているのだった。監督は、2007年すでに目しか動かない状態である末期ALSの塚田宏と出会い、生き切るまでの5年間を記録した。結婚生活47年。強く堂々と生き抜いてきた夫に対し妻は聞く。
「意思疎通が取れなくなったらあなたはどうしたい?」
出した答えは、家族への愛と感謝から絞り出された夫の本心だった。
スタッフ
監督:内田英恵
1981年東京生まれ。東京とロサンゼルスで映像制作を学ぶ。2008年、本作と同じ被写体の日常を描いた短編ドキュメンタリー「動かない体で生きる私の、それでも幸せな日常」を監督。Worldfest Houston(アメリカ)、look&roll(スイス)にて上映され受賞する。本作は初の長編ドキュメンタリー。
メッセージ:
私は塚田宏さんの声も笑顔も知りません。そんな彼が生き甲斐や目標を聞かれた時、いつも言う言葉がありました。(目の動きで文字盤を使って話します。)それは「明日を迎えること。」明日自分が生きていると言うことを信じて、今を精一杯に生きている。宏さんにとって一刻一刻全ての瞬間が先の見えない旅である事、同時に新たな瞬間を楽しみに前向きに生きているという事を、作品のタイトル「あした生きるという旅」に込めました。
音楽:田辺玄
英語ナレーション:Kimberly Forsythe